馬・乗馬業界に転職って簡単なの?

乗馬クラブで働くというと、皆さんどんな仕事をイメージされますか?
もちろん馬に乗れる、インストラクター、シュッとした感じ(笑)などでしょうか。
実際には、馬に乗らないスタッフもいます。業務内容はレッスン指導に限らず、接客サービスに近いものです。そのほか、乗馬の魅力を広めるためにイベントへ出向いたり、馬のケアを行ったりもします。
特に『乗馬の魅力を広めるためのイベント』などは、新しい発想が必要で、前職の経験をいかしてくれる転職組が活躍できる場でもあります。
そんなところから乗馬クラブクレインでは転職による中途採用も積極的に行っています。今回は転職で乗馬クラブスタッフになった二人にインタビューしてみました。
前職はドライバー(運送業)、から乗馬インストラクターに

田下さんは、乗馬クラブクレインの会員として乗馬を始めました。障害競技に出場するようになった頃、転職への思いも芽生えたといいます。前職から現在のインストラクターになるまでの経緯について、お話を伺いました。
-田下さんは、最初は会員として乗馬を始められましたよね。馬に乗ることは好きだったと思いますが、仕事にしたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
田下「三谷所長に声をかけていただいたのがきっかけです。ただ、最初はやはり迷いもありました。今までの会社で積み重ねてきたこともありましたし、どうしようかなという気持ちもありました。そんな中で、クラブ内競技などで障害に取り組むうちに、もっと上手くなりたいと思うようになったんです。
クリリンという馬に多く乗せてもらっていたのですが、当時の自分はクリリンの能力を十分に引き出せていませんでした。自分がもっと上達すれば、この子がもっと評価されるのではないかと思ったんです。
この子は合図に反抗して蹴ることもありますが、技術のある人がきちんと乗れば勝てる馬です。もっと上手くなって、そういう乗り手になりたいと思ったことが、入社を決めた理由です。」
-ちなみに、前職ではどのようなお仕事をされていたのですか?
田下「前職は中距離トラックの運転手です。中距離のルートを3往復、4往復と、何度も走っていました。」
-なるほど。何を運んでいたのですか?
田下「飲料や、ドライフードというのでしょうか、カレー粉などの調味料を含む食品です。一番遠いところでは、都内の錦糸町あたりまで何度も往復していました。」
-まったく違う職種に移られたのですね。トラック運転手のお仕事は、勤務時間でいうと一般的な9時~5時のような形でしたか。
田下「だいたいそうですね。決まっていた時間は今とあまり変わりませんが、朝5時、6時頃から8時頃までだったと思います。少し長めではありましたが、今も朝に馬に乗る時間を考えると、あまり変わらないくらいです。」
-仕事内容としては、大きく変わりましたか?
田下「大きく変わりました。本当にそう思います。」

-最初のきっかけに戻ると、三谷所長から声をかけられたことに加えて、会員として乗る中で、本当に上手い乗り手になりたいという気持ちが芽生えたのですね。ただ、声をかけられてすぐに転職したわけではなかったのですよね。
田下「はい、すぐではありませんでした。迷いがありましたし、前の会社にもとても良くしていただいていたので、転職はあまり考えていませんでした。このまま前の会社で働き続けるのだろうと思っていましたし、乗馬は好きなので趣味として続けていくものだと思っていました。特殊な世界でもありますし、本当に自分の仕事になるとは思っていませんでした。」
-迷いながらも、やはり挑戦してみたいと思ったのですね。
田下「そう思えたのは、最終的に所長と話したときでした。『もっと上手くなれるように練習して、競技も頑張ればいいじゃないか』と声をかけていただき、自分の中で踏ん切りがつきました。上手くなるなら、クラブ内だけで通用するのではなく、どこへ行っても上手いと思ってもらえる選手になりたい。外部競技にも挑戦して力をつけ、外でも認めてもらえるようになりたいと思えたことが、決断の大きなきっかけでした。」
-実際に転職してみて、いかがですか。思っていたことと違った点はありますか。
田下「ある程度は想像していましたが、乗馬クラブでも、ここまで裏側でシステムやパソコンを使っているのかと驚きました。」
-たしかに、乗馬クラブでシステムを使っているイメージはあまりないかもしれませんね。他にはありますか?
田下「良い意味で印象的だったのは、関口チーフをはじめ、皆さん本当に面倒見が良いことです。言わされているわけではないのですが(笑)、困ったときに親身になって相談に乗ってくださり、『ここはこうしたらいい』と具体的に助けてくれます。良い意味で、想像していた以上に恵まれた環境でした。」

-入社してすぐの頃は、かなり馬に乗っていましたよね。
田下「会員の頃とは違い、トレーニングとしての騎乗になりますが、希望すれば馬に乗れる環境になりました。乗れるようになったというより、練習の密度がぐっと濃くなったと感じています。
最近は、ほぼ2日に1回ほど大濱指導員に教えていただいています。大濱さんがいないときは、教わったことを復習したり、宿題のように取り組んだりしています。目的を持って乗れるようになったことが、とても楽しいです。
『これができるように乗ろう』と考えながら取り組めるので、すごく面白いですね。
ただ乗るだけでなく、『この動きにつなげるために、この運動がある』ということが分かってきました。障害を飛ぶときも、その前段階の準備運動があるからこそ、馬が障害を飛べるのだと理解できるようになってきました。
会員だった頃に取り組んでいたことと、今学んでいることがつながってきた感覚があります。大濱指導員のレッスンで、その大切さを教わりながら取り組んできました。たとえば障害へ向かう過程で、回転をどうつくり、どう障害へ向かわせるのかは、以前はよく分かっていませんでした。表面上はきれいに回転して、きれいに向かえればよいと分かっていても、実際にどうすればきれいに回れるのかまでは理解できていなかったんです。
今もすべてを理解できているわけではありませんが、丁寧に教えていただく中で、自分の中で少しずつ点と点がつながってきています。うまくいかない部分もありますが、それも含めて、乗っていることが本当に面白いと感じています。」
-そうして馬とより深く関わるようになってきた中で、馬と接していてどのようなところに楽しさを感じますか?
田下「一番楽しいのは、障害の手前まで馬をうまく導けたときです。飛べる馬に乗せてもらっているので、障害を飛ぶこと自体はできますが、馬を力ませず、うまく回転させ、まっすぐ障害へ向かわせられたときには大きな達成感があります。
また、ロードアイオロスという新馬のトレーニングにも取り組んでいます。大濱指導員と一緒に、若い頃から見てきた馬が成長していく過程にも面白さを感じます。ロードアイオロスは、入社後に初めて任せてもらった馬なので、ずっと一緒に育ててきた感覚があります。障害を見たときに自分から向かっていくような、楽しんで飛んでいる姿を見ると、とても嬉しくなります。」
-ロードアイオロスは、新馬として初めて担当した馬だからこそ、思い入れも深いのですね。最初は常歩でさえ、きちんと前に歩かせるのが難しかったですよね。
田下「はい、見るに見かねて助けに来ていただいた、あの馬です(笑)。」
-なるほど。そこまで成長してきたのは、本当にうれしいですね。馬と関わる時間も長いと思いますが、休日は何をしているのですか?
田下「休日は馬のトレーニングに励んでいます。(クレインでは勤務時間外に任意で騎乗練習ができ、騎乗時間に対して騎乗奨励金が支払われます)勤務のことを気にせず、純粋に馬と向き合える時間が楽しいです。大濱指導員と休みが重なると教えていただけますし、時には関口チーフからジークリリーという馬に乗せてもらうこともあります。そうした時間が本当に楽しいです。」
-趣味が仕事になったような感覚ですね。
田下「馬と向き合える時間そのものが楽しいです。何も考えずに乗っているわけではありませんが、乗せてもらっている馬と相談しながら進めていける感覚があり、それが一番心地よいですね。」
-仕事では、前職と違ってサービス業としてお客様と接したり、レッスンで教えたりする場面もあります。その点にギャップはありませんでしたか?
田下「ありました。そこは本当に難しいことが多いです。ただ、お客様にとても支えていただいています。会員時代から知っている方はもちろん、ベーシックで初めてお話しする方も含め、皆さんが助けてくださるので、なんとか取り組めていると感じています。その点は、本当にありがたいです。」
-回を重ねる中で、レッスンの進め方も少しずつ自分なりにつかめてきましたか?
田下「関口チーフのベーシッククラスのフォローに入らせていただく中で、伝え方を少しずつ学んできました。大濱指導員から教わったことや、関口チーフに朝の騎乗時などに教えていただいたことを、自分なりに理解し、お客様にも分かりやすく伝えていけたらと思っています。本当にお手本にさせていただいています。」
-レッスンをしていて、どんなときに嬉しいと感じますか?
田下「嬉しいのは、お客様が自分の合図で馬をきちんと発進させられたときです。これまでサポートしてきたことを通じて、『自分で動かせた』と感じていただける瞬間が、一番面白く、楽しいです。」
-今は主にベーシッククラスで、初心者の方のレッスンを担当しているのですね。では、逆に大変なことは何ですか?
田下「大変なことは多いですが、苦痛に感じているわけではありません。やはり、お客様に伝えるべきことは、きちんと伝えなければいけないと感じています。
引き馬やレッスンでの対応、特に洗い場に戻ってからの馬との距離感などは、最初に私たちが正しい形を伝えないと、お客様は『これでいいんだ』と思ってしまいます。だからこそ、そのあたりはしっかり伝える必要があると感じています。」
-たしかに、伝え方は難しいですよね。実際に見せずに言葉だけで伝えるのは難しいですし、伝えるべきことも多いですからね。では、これから挑戦していきたいことはありますか?
田下「もっと馬がきれいに障害を飛べるように、そこまで正しく導ける騎乗技術を身につけたいです。自分の姿勢や乗り方についても、大濱指導員やリチャード・フォーゲル選手のように、無駄な動きがなく美しく乗れるようになりたいと思っています。」
-そうした騎乗技術の上達の過程で学んだことを、会員さんにも伝えていけるといいですね。
田下「はい、伝えていけたらと思っています。」
いかがでしたでしょうか、乗馬というと特殊な世界に思われがちですが、馬に乗る以外は他企業と変わらないです。
少し話を聞いてみたい、乗馬の世界がどんな感じか体験してみたい、そんな方はぜひ一度馬に乗ってみてください。
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次回は塾講師をしていた松坂さんのインタビューをお届けします。
乗馬の世界を体験してみませんか?
乗馬は、馬とのふれあいから始まり、レッスンを重ねることでさまざまな楽しみ方が広がっていきます。まずは体験乗馬で、馬と一緒に動く楽しさを感じてみませんか?
プロフィール
大学時代に乗馬を始める。卒業後、乗馬クラブクレインに入社。主に乗馬体験レッスンを担当、多くの方に乗馬や馬術、馬について広めるべく活動している。
経歴
大学馬術部にて乗馬を始める 乗馬クラブクレインで26年勤務
保有資格・認定
全国乗馬倶楽部振興協会ブリティッシュ初級指導者資格 全国乗馬倶楽部振興協会障害1級 日本馬術連盟騎乗者資格B級
所属・役職
乗馬クラブクレインインストラクター(乗馬クラブクレイン千葉富里)




