障害馬術について聞いてみました!

馬術競技・大会

2025年11月13日~16日にかけて東京世田谷にあるJRA馬事公苑にて全日本障害馬術大会2025PartⅠが開催されます。今年の障害馬術日本一を決める大会になります。この大会を前に障害馬術についてクレインの障害部門コーチを務める桝井俊樹さんにお話しを伺いました。桝井さんは2016年リオオリンピック障害馬術競技出場経験もあり、国際舞台で積んだ知識と経験を選手たちに伝えています。

勝つために必要なこと

障害馬術競技は、競技アリーナに設置された様々な色や形の障害物を、決められた順番通りに飛越、走行するもので、障害物の落下や不従順などのミスなく、早くゴールすることが求められます。障害物の大きさは、オリンピックなどのトップレベルの大会では、高さは160cm、幅(奥行き)は200cmを超えるものもあり、選手の技術と馬の能力、さらにそのコンビネーションが揃ってこそ、迫力と華麗さを兼ね備えた走行や飛越をみせることができるのです。(引用:日本馬術連盟)

さて、そのような障害馬術競技、日本一を目指すためには何が必要なのでしょうか?

ー「全日本選手権はどのような位置づけなんでしょうか?」

桝井「やっぱり一番大事な試合ですよね。その名の通り日本一を決める試合だから、年間を通じていろんな競技に出てポイントを取って、ポイント上位の人馬が出場する競技、日本では一番大事な競技です。」

ー「なるほど、その大事な試合に出場するまでの過程もそうなんですが、勝つためには何が必要なんでしょうか?」

桝井「どのスポーツにも言えることかもしれないけれど、運もありますし、けど運も実力だから、日常でやるべきことをちゃんとやっていないと運は絶対来ない。馬があってのスポーツだから、馬の健康管理、メンタルの管理、その上での騎乗技術だから、それらが全部合致しないと勝てない。勝つ秘訣は無いから、極論を言ったら365日プラン立てて緻密にやっているかどうかが大事になってくる。」

ー「全日本大会に照準を合わせて、緻密なトレーニングをしていくんですね。」

桝井「そうです。全日本に馬のピークを持っていくために、この競技を最後にしてこういう走行をしたい、シミュレーションをするだとか、もっと前だったら、この競技で試して上手くいったら、次の競技ではこういうことをしようなど、逆算してプラン立てていく。」

ー「さきほど、運も実力の内と言われましたが、運というのはどう表れるのでしょうか?」

桝井「神様!?が降りてくる(笑)日頃から全部を注いでおかないと神様は降りてこないと思う(笑)全部を注ぐというのは、例えば今日はちょっとしんどいから軽めの運動にしておこうとか、人の都合でトレーニングをしなかったりする。やっぱり、それを1回すると頻繁になってくるし、そうやって人は怠惰になっていく。そんな人には絶対、運は向かない。」

全日本チャンピオンになりました、次の日も最強っていうわけではない

ー「では運が向いてくる選手は、どんな選手なんでしょうか?」

桝井「もちろん必死にやっていても、全部が報われるわけじゃないけど、勝つのは一人だからね。トップライダーが一杯いて、その中で馬の調子やメンタル、天気や周りのサポート、会場の雰囲気、などなど全てが合致して勝てるわけだから、逆に言ったら、1回全日本チャンピオンになりました。じゃ、次の日も最強かっていうとそうではない。来年、勝つために次の日からまた緻密にトレーニングしていく。そういう心構えっていうか意志がいい選手を保つ、上位の選手になれるあり方だと思います。」

ー「桝井さんは過去国際競技も経験してきて、それを感じた瞬間はありましたか?」

桝井「オリンピック選手も全日本出るような選手も、世界の厳しさを知ったからもっと練習しようとなったわけではなくて、そういう選手は最初からやっている。朝早くから乗っているし、ずっとやり続けるからターニングポイントみたいな機会が訪れる。

例えば、F1で言ったら、強いドライバー、速いドライバーに速いマシンがついて、予選で1着になるのは当たり前で、ポールポジションで一番前から走ったら勝てるわけない。けど、雨の日はマシンの差が出にくいから腕の差になる、そういう時にいつも勝ってるドライバーと競り合っていたらいたら、このドライバーにもし速いマシン与えたら1番になるかもしれない、と思わせられる。

つまり、自分の実力になるよう普段からコツコツやっている人が、そういうチャンスを掴むことが出来る。人と同じことやっていたら人並みにしかならない。毎日、人よりちょっとでもいいから練習量多くしたり、集中力を多くしていたら、10日間ではそう差はないかもしれないけど、10年経ったらすごい差になってくる。」

自分がイメージできる選手がいないとダメ

ー「さきほど努力をすれば必ず報われるわけではないと言っていました。障害馬術競技に関しては、努力の仕方はあるのでしょうか?」

桝井「単純に言うと、やっぱり見て自分がイメージができるモデルがいないとダメ。例えばスターホースがいて強い馬と強い選手がいたら、こんな馬に仕上げたいとか、この選手みたいな乗り方をしたいなというモデルがいないと具体的にイメージができない。

見るっていうのはすごく大事で、なんで馬がこういう風に動くのか?とか、自分が乗っていて上手くいかない馬を上手い人に乗ってもらって見せてもらうとか、よく観察するというのが一番早い。自分が教えてもらっているときは、自分の乗りを客観的に見ることができないし、見てくれているときは、馬の動きに合わせて今はこうしてって言ってもらえるけど、一人になったらできない。

まずは馬の動きを見なければならないから、上手い人が乗っているときと、自分が乗っている時と、馬の違いがどこに現れているかを観察して気づかなければならない。障害を飛ぶときはフラットワークの結果だから、どういう手順で常歩して、常歩の動きがどうなってから速歩に移っているか、見て研究していく、かつ努力もする。そういう姿勢って自分が学びたいとか、自分が心の底からこうなりたいとか思わないと生まれてこない。思って実行している人は実力がついてくる。」

障害競技を見るポイントは?

ー「障害馬術競技はLIVE配信もされますが、見るポイントはありますか?」

桝井「障害は動物、馬の上に人が乗っていて決まったコースを、障害物を飛んでいくのはすごいこと。国体なんかは乗馬を知らない方が見ていたりするけれど、ダブルとかトリプル飛んでいたらすごい歓声が上がるし、見ていて楽しいと思う。

少し見慣れてきたら、馬が自然に楽しそうに飛んでいるのか、すごく苦しそうに飛んでいるのか分かってくると思う。もちろん楽しそうに飛んでいるのがいいし、その中で、障害を落とさずに小回りする人もいれば、大回りしかできない人もいる。

障害の基本的なルールがわかれば、楽そうに飛んで、ちっちゃく回って、自然にまた次の障害飛んで、結果タイムも良かったというのが理想、馬が辛そうなんだけど、無理やり引っ張って小回りして、抵抗しながら飛ばされている。みたいなところが見えてくる。

あとは、障害の踏切、馬が障害を飛ぶ際に踏み切る位置があっていたら綺麗に飛べるし、間違ったら苦しそうに飛ぶ、全部が全部上手くいったらいいけど、そうはいかないことも、その中でも上手く馬を誘導して減点なくゴールできたらいい。そういったところも障害の見どころです。

ー「選手権競技は大障害(高さ160cm)になりますが、障害を飛んでいるときはどんな感じなんですか?私なんかが見ていると壁が迫ってくるように見えるのですが・・・」

桝井「大障害飛んでいる選手はいろんな過程を経てきているから、別に壁とは思わない。大障害を飛ぶ能力のある馬に能力のある人が乗るので、けど、そこに行くまでの過程は大変。自分が初めて大障害飛べた時はすごくよく憶えているし、嬉しかった。最初、その馬は少しやんちゃで飛ぶ能力はありそうだったんだけど、トレーニングをして110cmの障害から飛び始めたら能力を発揮してくれて、初めてその馬と共に大障害を飛べて・・感動しました。調教するということがわかったし、大障害選手の仲間入りができたと思った瞬間です。」

みなさん、馬がどういう風に障害を飛んでいるのが良いか、少しイメージが沸いてきたでしょうか?11月13日から行われる全日本障害馬術大会PartⅠ2025はライブ配信があります。乗馬クラブクレインからも選手が出場しますので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします!

日本馬術連盟サイトはこちらからどうぞ。

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