馬場馬術について聞いてみました!

2025年11月7日~9日にかけて御殿場市・馬術スポーツセンターにて全日本馬場馬術大会2025PartⅠが開催されます。2025年の日本一を決める馬場馬術競技が行われます。乗馬クラブクレインの馬場馬術部門コーチを務める白石和也さんに聞いてみました。
馬が自らやっているように見えること
馬場馬術は20m×60mの長方形の馬場で行われます。馬の調教進度によって競技クラスが分かれ、常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)を基本に様々なステップを踏んだり、図形を描いたりします。審査員が演技の正確さや美しさ、演技全体の印象について0~10の点数をつけます。高い得点を取るためには何が必要になってくるのでしょうか?

ー「馬場馬術で高い得点を取るためには何が必要になってくるのでしょうか?」
白石「もちろん、馬の動きに乱れが無いというのは当然のことなのですが、いかに馬の運動の形を変えずに簡単にスムーズに演技ができているのかが大事になってきます。」
ー「形を変えずに自然な感じで・・・」
白石「そう、馬が自分からやっているような感じに見えると得点があがります。例えば、伸長常歩は馬の形を変えて頸を伸ばしますが、頸を伸ばす事で馬の体も伸びてオーバートラック*1するように促します。そのとき、ハミへの伸展、自ら進んでやる勢い(速度)がないとなかなか後肢が前肢を超えていかない。」
*1:オーバートラックとは馬の前肢がついた跡を後肢が超えて踏み込むことです。
ー「難しいですね。馬が自然にやっているように見せる、ってことは、馬場に入る前に、馬とうまくコミュニケーションが取れて、コンタクトが取れていないと、無理やりやっている苦しいっていう感じでの演技になっちゃうってことですね。」
白石「そうですね。日頃のトレーニングの結果になるので、言ってすぐにできるようなことではないです。ハミを受け入れている状態が、ちゃんと後ろ(後肢)からハミに繋がっている状態、先ほども話しましたが、馬が自分から進んでハミに乗っている状態というのは、無理やり引っ張って縮められているのではなくて、後ろからくるエネルギーをちゃんと馬が受け止めた状態で運動しているということです。」
少し専門的な言葉が多くなってきましたが、少しイメージしてみてください。畑は違いますが、競馬で走っている馬たちは目いっぱい体を伸ばして飛ぶように走っています。逆に馬場馬術はピアッフェと呼ばれる、その場で足踏みをしているような動きを求められることも(下図一番上のイラスト)。前に進もうというエネルギーを収縮してその場に留めます。

トレーニングスケールに沿って
ー「日頃のトレーニングが大切とのことですが、どのようなトレーニングが必要なんでしょうか?クレインではグール・ワディアさん*2の講習会を行っていましたが、講習会であげられていたピラミッド型のトレーニングが基本にあるということですか?」
*2:BHSI(英国国家馬術インストラクター)の資格を有し、長年国内外の乗馬指導の場で活躍してきたインストラクターです。現在はフリーのインストラクターとして全国を回り、その経験を生かしたレクチャーや講習を行っています。クレインではスタッフ向けに講習を行ってもらいました。
白石「トレーニングスケールですね。一番最初にリズムがあって、Suppleness(柔軟さ)、そしてコンタクトがあります。リズムは規則正しい動きのことですよね。乱れが無い。だからコンタクトが安定するし、そういったコンタクトは柔軟な動きの中で出てこなくてはならない。馬を動かしていくときに、ただスピードが上がっていくのは走っているだけで、前輪駆動と同じ、前に進めば進むほど前バランスになるからハミを引っ張らなくてはいけなくなるし、後肢が遅れてしまうから返りが悪くなる。」

白石「今、全日本クラスの馬は海外から輸入してくる馬が多いわけですが、やはりトレーニングスケールに則って馬が作られている。だから、乗る人自身がそれを理解していないと、最初に言っていた”馬が自らやっている”という状況は作られないわけです。」
全日本選手権の見方
ー「全日本選手権クラスになるとどれくらいのレベルが求められるのでしょうか?」
白石「出場する課目によって、求められるバランスって変わってくるんで、課目が上がってくればくるほど、馬がハミを受け入れているときのうなじの位置は、1番高くなってくるんですけど・・・馬の首から前が短く高くなるイメージです。そうすると前肢が引き上げられて前肢の蹄の高さが後肢の蹄の高さより高くなることでアップヒル*3になる。前肢が地面に着くのが遅くなれば空間期、間ができる。それを突き詰めたのがパッサージュ*4となります。空間期が最大になるということですね。全日本選手権クラスになると、こういった動きは当然求められます。」
*3:馬場馬術における「アップヒル」とは、馬のバランス状態を指し、後躯が積極的に働かせられ、腰部が肩甲骨よりわずかに低く、前肢が軽く持ち上げられている状態を意味する。
*4:パッサージュとは速歩の一種で、一歩ごとに肢を高く上げ、弾むようなリズムで前進する高度な運動です。
ー「では馬場馬術の演技を見るときは何がポイントに見ればよいですか?」
白石「そうですね。規定演技*5であれば事前知識として運動課目の内容を知っておくのはいいですね、どの標記からどの標記までは何をするのか?そうすると、丁寧に経路を回っている選手は運動課目が分かり易いし、標記のポイントもなんとなくではなくて、ここというところできちんと演技している。
ちゃんと、馬が運動の形を変えずに規則正しくやっているとか、乱れがない、見ていて感覚的に綺麗だなとか感じられるといいですね。それで結果が良ければ、良い演技だったという見方になる。今だとランニングスコアが出るのでその時のスコアをみくらべてみるのもいいし、自分が審判になったつもりで見ると面白いですよ。」
*5:演技内容が全て決められています。対して自由演技は決められた運動を取り入れた演技を構成し、音楽をつけて演技をします。運動課目は日本馬術連盟サイトでご覧いただけます。こちらからどうぞ。
奥が深い馬場馬術の世界、お時間がある方は、ぜひ、この11月7日(金)から行われる全日本馬場馬術大会を直接見に行ってみてください。特に最終日11月9日(日)に行われる自由演技は音楽と合わせて演技を見たいですよね。
日本馬術連盟サイトでLIVE配信もありますので、皆様、応援をよろしくお願いいたします!
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