競馬だけじゃない。引退競走馬の“その後”のはなし

ターフを風のように駆け抜け、多くのファンの夢を背負って走る競走馬たち。その躍動感あふれる姿は、見る者の心を揺さぶります。しかし、競走馬として一生を終える馬はごくわずかです。
「レースを引退した後、あの馬はどうしているのだろう?」
競馬を愛する方なら、一度はそんな思いを馳せたことがあるのではないでしょうか。今回は、競走馬がターフを去った後に歩み出す「第二の馬生」――セカンドキャリアについて、少しお話ししたいと思います。
「走る」から「寄り添う」へのリトレーニング
競走馬は、文字通り「速く走ること」を専門として育てられたアスリートです。そのため、引退してすぐの馬がそのまま乗馬になれるわけではありません。
まずは、人の合図を静かに待ち、人と一緒にゆっくりと歩くための「リトレーニング(再調教)」が行われます。
このリトレーニングは、いわば新しい言葉を覚えるようなものです。全力で駆け抜けることが正解だった世界から、人の呼吸に合わせ、一歩一歩を丁寧に踏み出す世界へ。元競走馬たちは、持ち前の賢さと真面目さで、この新しい環境に適応していきます。
彼らの仕事は多岐にわたります。初心者の方が初めて馬と触れ合う「体験乗馬」のパートナーから、繊細な技術が求められる「馬術競技」まで、それぞれの馬の性格や運動能力に合わせて、最適な場所が見つけられます。共通しているのは、どの場所においても「人の心に寄り添い、共に歩む」という大切な役割を担っていることです。
身体つきに現れる、役割の変化
馬を近くで観察してみると、競走馬時代と乗馬になってからでは、そのシルエットが驚くほど変化することに気づきます。
現役時代の競走馬は、余分な脂肪を削ぎ落とし、無駄のない、鋭く引き締まった体つきをしています。
一方で、乗馬として数年を過ごした馬は、全体的に丸みを帯びた、ふっくらとした体つきへと変わっていきます。これは決して運動不足で太ったわけではありません。人を背中に乗せてバランス良く歩くために、首や肩回りに厚みのある筋肉がつき、お腹周りもどっしりと落ち着いてくるのです。
この見た目の変化は、彼らが「戦うアスリート」から「信頼できるパートナー」へと、その役割を変えた証でもあります。穏やかな眼差しと、包容力を感じさせる柔らかな体つき。その変化を知ることで、馬という生き物の持つしなやかな強さをより深く感じられるはずです。
セカンドキャリアの光を繋ぐ「RRC」
こうした引退競走馬たちの活躍を支援し、彼らの技術を競う場として近年注目を集めているのが、「RRC(Retired Racehorse Cup:引退競走馬杯)」です。
RRC(Retired Racehorse Cup:引退競走馬杯)は、引退競走馬のセカンドキャリア形成と、乗馬・馬術への円滑な移行を目的として全国乗馬倶楽部振興協会が2018年度より開催している大会です。
RRCの目的は、単に順位を競うことだけではありません。
・引退競走馬のセカンドキャリア形成の促進
・馬を育てる人材の育成やリトレーニング技術の向上
・乗馬・馬術ファンを増やし、馬文化を広めること
これらを掲げ、日本各地で予選が行われています。競馬界から乗馬界へと、命のバトンを繋いでいくための大切な架け橋となっているのです。
馬事公苑で繰り広げられた、ある引退競走馬の記録
2025年12月6日(土)から2日間にわたり、東京・世田谷の「日本中央競馬会 馬事公苑」にて、全国の予選を勝ち抜いた馬たちが集う「RRC FINAL 2025」が開催されました。
かつて競馬場のパドックで見ていた馬たちが、今度は障害物を軽やかに飛び越えたり華麗に馬術経路を踏む姿を見せる。
その光景は、競馬ファンにとっても、馬術ファンにとっても、感慨深いものがあります。
この大会には、乗馬クラブクレインの各地で日々レッスンに励んでいる元競走馬も出場しました。
結果は両備乗馬クラブ・クレイン岡山に所属しているグレートウォリアーが7位入賞。
華々しい優勝ではありませんが、引退後に地道なトレーニングを重ね、第二の舞台で堂々と評価を受けたことは、彼にとって、そして支えてきたスタッフにとっても大きな誇りとなりました。
こうした事例は特別なことではなく、全国の乗馬クラブで静かに、けれど着実に積み重ねられている「セカンドキャリアの日常」の一コマなのです。
競馬で見ていた馬たちに、今度は“会いに行く”という選択肢
競走馬としての現役生活は、長い馬の一生の中ではほんの数年です。
その後に続く、十数年、あるいは二十年以上の月日。そこには、競馬場のスタンドからは見えなかった、穏やかで温かな「馬と人との時間」が流れています。
もし、かつて応援していた馬の名前をふと思い出したら。あるいは、馬という生き物そのものに興味が湧いたら。
競馬場でその速さに圧倒されるだけでなく、乗馬クラブで彼らの穏やかな息遣いを感じ、柔らかな鼻先に触れてみてください。
そこには、全力で走り抜けた過去を糧に、今を一生懸命に生きる、優しきパートナーたちの姿があります。
競馬で見ていた馬たちに、今度は“会いに行く”という選択肢もある。
そんな新しい馬との関わり方が、あなたの日常を少しだけ豊かにしてくれるかもしれません。
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