春は馬たちの“ごちそう”の季節|馬が青草を好む理由と食事のひみつ

春になると、茶色かった景色が少しずつ緑に変わり、馬たちのまわりにもみずみずしい青草が増えてきます。
頭を下げたまま、もぐもぐ、もぐもぐ……。牧場などで、馬が夢中になって草を食べている姿を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
実は、春の若草は馬たちにとって魅力いっぱいの食べものです。
今回は、馬が春の青草を好む理由や馬ならではの消化のしくみ、乗馬クラブの馬たちが普段どんなものを食べているのかをご紹介します。

なぜ馬は春の青草が好きなの?
春に伸び始める若草は、成長するためのエネルギーを蓄えており、糖分(非構造性炭水化物)を多く含むことがあります。また、柔らかくみずみずしいことも、馬たちが好んで食べる理由のひとつです。
人間でいえば、旬のフルーツや焼きたてのパンを楽しみにするような感覚に近いのかもしれません。
春になると馬たちが青草に夢中になるのは、単なる食いしん坊だからではなく、この季節ならではの草の特徴にも理由があるのです。
春の青草にはどんな栄養がある?
青草は乾草に比べて水分を多く含み、ビタミン類などの栄養素を含んでいます。
特に、青草に含まれるβ-カロテンは馬の体内でビタミンAに変換され、健康維持に役立ちます。また、ビタミンEも含まれており、乾草では保存期間などによってこれらの栄養素が減少することがあります。
さらに、成長途中の若い草は、成熟した草に比べて繊維が少なく柔らかい傾向があります。
ただし、馬が喜んで食べるからといって、青草を好きなだけ食べてもよいわけではありません。
春の青草は糖分を多く含むことがあり、急にたくさん食べたり、食事内容が大きく変わったりすると、馬の体に負担をかけることがあります。
青草もほかの飼料と同じように、馬の体調や体型、運動量などに合わせて適切に管理することが大切です。
馬はどうやって草を消化しているの?
馬は草食動物ですが、牛やヒツジのような「反芻動物」ではありません。
馬の胃は体の大きさに対して比較的小さく、食べたものは胃や小腸を通ったあと、発達した盲腸や大腸へと送られます。そこで腸内の微生物の働きによって繊維を発酵させ、エネルギーとして利用しています。
そのため馬の食事では、
・一度にたくさん食べるのではなく、少量ずつ食べる
・牧草などの繊維質を十分にとる
・急激に食事内容を変えない
といったことが大切です。
もともと馬は、自然の中で長い時間をかけて草を食べながら暮らしてきた動物です。
馬が頭を下げて、もぐもぐと草を食べ続けている姿。何気ない光景ですが、実は馬本来の食事スタイルにとても近い姿なのです。
乗馬クラブの馬たちは何を食べている?
青草を食べる馬の姿はおなじみですが、乗馬クラブでは一年を通して青草だけを食べているわけではありません。
馬たちの健康を維持するため、牧草を中心に、馬の年齢や体型、運動量などに合わせてさまざまな飼料を組み合わせています。
ここでは、乗馬クラブで馬たちが食べている代表的なものをご紹介します。
牧草(乾草)
馬の食事の基本となるのが牧草です。
チモシーやオーツヘイ、アルファルファなどの牧草を乾燥させたもので、馬にとって大切な繊維質をとることができます。
クラブで馬たちがのんびりと牧草を食べている姿を見かけることがありますが、しっかりと繊維質をとることは、馬の健康を保つうえでも大切です。

ペレット
ペレットは、さまざまな原料を配合し、粒状に加工した飼料です。
製品によって原料や栄養成分は異なり、馬に必要な栄養やエネルギーを補うために利用されます。
馬の年齢や体型、運動量などに合わせて、種類や与える量を調整します。

ヘイキューブ
ヘイキューブは、牧草を細かくして圧縮し、キューブ状に固めた飼料です。
牧草由来の繊維質をとることができ、馬の状態や食事内容などに応じて利用されます。
乾草と同じく牧草を原料としていますが、コンパクトに加工されているのが特徴です。

馬たちの食事も一頭一頭に合わせて管理
人と同じように、馬も一頭一頭、必要な食事の内容や量が異なります。
乗馬クラブでは、レッスンへの参加状況などからわかる運動量をはじめ、太り気味・痩せ気味といった体型や体の状態、お腹の調子や食欲などの健康状態、さらに年齢なども見ながら、それぞれの馬に合わせて食事を調整しています。
たとえば、与える乾草の種類を変えたり、ペレットの量を調整したりするほか、季節や馬の状態に応じて必要な栄養を補うこともあります。
夏場には、鉱塩や岩塩などで塩分やミネラルを補給。また、必要な栄養素の補給をはじめ、関節や蹄の健康維持など、それぞれの目的に合わせてサプリメントを取り入れることもあります。
さらに、高齢の馬や歯が弱い馬、体調に合わせて、飼料を水やお湯でふやかして食べやすくすることもあります。クレインでは、こうした給餌方法を「ダボ飼い」と呼んでいます。
同じクラブで暮らしていても、すべての馬がまったく同じごはんを食べているわけではありません。
毎日の様子を見ながら、その馬に合った食事を考えることも、馬たちの健康を支える大切な管理のひとつです。

春の馬たちを観察してみよう
春から初夏にかけては、草木が一気に成長し、馬たちのまわりの景色も鮮やかになっていきます。
馬たちが大好きな青草も、そんな季節の楽しみのひとつ。でも、普段クラブで暮らす馬たちの食事をのぞいてみると、牧草やペレットなどを基本に、運動量や年齢、体型、健康状態に合わせて一頭一頭細かく調整されていることがわかります。
クラブを訪れたときには、ぜひ馬たちの「食べる姿」にも注目してみてください。
のんびり牧草を食べていたり、暖かな陽気の中で砂浴びをしていたり。レッスン中とはまた違った馬たちの表情に出会えるかもしれません。
ゴロゴロ、もぐもぐ。
そんな馬たちの何気ない日常も、乗馬クラブならではの楽しみのひとつです。
written byOkanami
馬たちをもっと近くで感じてみませんか?
草を食べたり、のんびり過ごしたり。馬に注目してみると、レッスン中とはまた違った表情やしぐさに出会えることがあります。 乗馬クラブクレインでは、初めての方でも参加できる体験乗馬を実施しています。 馬の背中に乗る楽しさはもちろん、馬を間近で見たり、ふれあったりする時間も乗馬クラブならではの魅力です。ぜひ馬たちに会いに来てください。
プロフィール
大学卒業後、乗馬クラブクレインに入社し、埼玉・大阪で14年間勤務。小学1年生と5年生の子どもも馬が大好きで、家族で外乗を楽しむことも。夫は馬の獣医師で、家族全員が馬と関わる生活を送っています。
経歴
大学卒業後、乗馬クラブクレイン入社 埼玉・大阪のクラブで14年間勤務 現在はクレインのコラムを執筆しつつ、フォトグラファーとしても活躍。
保有資格・認定
乗馬ライセンス障害2級 ダイビングライセンスPADI AOW 普通自動二輪免許




