馬×匂い②~あの表情はなに!フレーメンの謎~

洗い場で馬装をしているとき、突然上唇をくいっと持ち上げて歯をむき出しにすることがあります。
初めて見ると「怒っているのかな?」と驚くかもしれませんが、これは「フレーメン」と呼ばれる馬の本能的な行動です。
威嚇ではなく、周囲の匂いを詳しく調べているときに見られる仕草のひとつです。
馬の世界を知るうえでとても興味深い行動で、今回はこの「フレーメン」について解説します。
フレーメンとは?
フレーメンは、馬が匂いの情報をより深く分析するための動作です。
馬の口の奥には「ヤコブソン器官(鋤鼻器官)」という特別な器官があり、フェロモンなどの化学物質を感じ取る役割を持っています。
上唇をめくり上げることで空気中の匂い成分を効率よく取り込み、通常の嗅覚だけでは分からない情報まで読み取っています。
この器官は馬だけでなく、蛇やトカゲなどの爬虫類や、犬・猫・牛・豚など多くの哺乳類にも存在しています。
なお人間にも胎児期には存在していますが、進化の過程でその機能は失われたと考えられています。
フレーメンはどんなときに見られる?
馬がフレーメンをする理由はいくつかあります。
もっとも多いのは、強い匂いや初めての匂いに出会ったときです。
馬は尿や糞、他の馬の体臭などから多くの情報を読み取るため、気になる匂いがあるとフレーメンをして分析します。
また、発情期のフェロモンを感じ取ったときにもよく見られます。これは繁殖行動に関わる重要なサインです。
さらに、好奇心が刺激されたときにもフレーメンをすることがあります。
人の汗や香水、シャンプーの匂いに反応することもあります。
馬にとって匂いは「情報の宝庫」であり、フレーメンはその情報を整理するための行動です。
■ポイント
・他の馬の状態を感知する
・発情の有無を判断する
・緊張や興奮の状態を読み取る
・人の汗などの成分にも反応する
フレーメンは怒っているわけではない
歯茎をむき出しにして歯が見えるため「怒っているのでは?」と誤解されがちですが、フレーメンは攻撃行動とはまったく関係ありません。
むしろ、馬がリラックスしているときや、興味を持ったときにも見られます。
一生懸命に匂いを分析しているだけなので、安心して観察してみてください。
人間でいうとどんな感覚?
人間にはヤコブソン器官がほとんど機能していないため、フレーメンのような行動はありません。
しかし、匂いによって感情が動くことはあります。
赤ちゃんの匂いに安心したり、家族やパートナーの匂いに落ち着いたりするのは、匂いと記憶・感情が深く結びついているためです。
また、人間にもフェロモンと呼ばれる化学物質が存在し、無意識のうちに相手の印象や安心感に影響を与えているとも考えられています。
馬はこの仕組みをより本能的に活用している生き物と言えるかもしれません。
乗馬クラブで見かけたら
もし馬がフレーメンをしていたら、
「何か気になる匂いがあったんだな」
「周囲の情報を集めているんだな」
と理解してあげると、馬の気持ちがより分かりやすくなります。
強い香りの香水や整髪料など、人工的な匂いは動物にとって刺激が強い場合もあります。
フレーメンは、馬の世界を知るための大切なヒントです。
レッスンの合間に見かけたら、ぜひその表情を観察してみてください。
written by Okanami
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