馬を詠む

馬を詠む

  『「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日』誰もが知っている俵万智さんの第一歌集の歌。あれから35年、今、再び短歌ブームが到来しているそうです。俳句は五・七・五、和歌や短歌は五・七・五・七・七。どれもその時の思いや情景を短く、ぎゅっと詰め込むので、時短やミニマムが大好きな若い世代の人に共感を得たのかもしれません。

 俳句にも短歌にも昔から「馬」が登場するものは非常に多く、いつも人々と馬が共に生活していたことが感じられます。今回は秋や冬の季節と馬を詠った歌をいくつかご紹介したいと思います。

●秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に(万葉集)
(秋風がすずしくなりました。さあ馬を並べて萩の花を見に行きましょう)
24932912_s.jpg

 私も、菜の花や桜など...花の時期には外乗に行きたくなります。萩の花というところがなんだか昔風?おしゃれですよね。万葉集では「馬並めて(並べて)」という言葉がよくつかわれるそうです。

●馬の子の故郷はなるる秋の雨(小林一茶)
(馬の子が故郷を離れる時に秋の雨が降ってきた)

 こちらも有名な小林一茶の句です。秋の雨のなんとなく物悲しい雰囲気と、仔馬の寂しい気持ちを詠んでいる句ですね。俳句では「馬」は季語としても使われていて「春駒」「馬冷す」「馬洗ふ」「馬肥ゆ」などがあります。


●はつ雪や見事や馬の鼻ばしら(池田利牛)
(初雪の朝、馬が勇み立って鼻柱を高くあげている)

●はつ雪や先馬やから消そむる(森川許六)
(初雪が降ったが、それが消えるのは馬屋の屋根から始まる(馬がいて暖かいから)

 雪原と馬は絵になりますよね。涼しくなるほど元気が増してくる馬達(暑いのは苦手な動物なので)冬の馬運動では馬達がやんちゃで、元気いっぱいになるのを思い出します。
1700734_s.jpg

●冬の日や馬上に凍る影法師(松尾芭蕉)
(冬の薄い日差しのもと、北から吹き付ける空っ風は冷たく、馬上で行く自分の姿は寒さに凍り、まるで影法師のようである)
 こちらは有名な松尾芭蕉の俳句ですね。車のない時代、馬で旅をする芭蕉にとって馬の存在はとても重宝したことでしょう。ちなみに影法師とは影(影絵)の事です。


 ●吐く息も葦毛も馬場も白き朝
(雪の日の朝、凍り付く息と、葦毛と雪。すべてが白い朝だなぁ)

 せっかくなので私も一句(笑)近年は温暖化が進み、かなり寒い地方以外は朝に馬場が凍ったり、雪が降ることも少なくなりましたが、10年ほど前は関東のクレインでも馬場が凍ることがありました。新緑や紅葉の乗馬も気持ちよいですが、凍てつく寒さの中での馬との時間も良い思い出です。

 最近は特にTwitterやInstagramなどで短歌ブームが広がっているそうです。日々の気持ちをぎゅっと短く歌にしたら、気持ちがすっきりするかもしれませんね。日記などはなかなかハードルが高いですが、短く歌に詠むのなら...私もできる気がしてきました!ぜひ馬の可愛さ、乗馬の魅力、苦労、馬とともに過ごす日々を詠ってみませんか?


written by Okanami

画像:写真ac

メニュー