馴致(じゅんち)

馴致(じゅんち)

 「馴致(じゅんち)」という言葉を聞いたことはありますか?大昔から人と常に近い立場で、仲良くしてくれている馬達ですが、その仲を築いていくうえで、「馴致」は外せない通過点になります。馴致とは『①慣れさせること②次第にある状態になるようにしむけること』とあります。実は馬達は最初から馬車を引いてくれたり、人を乗せてくれるわけではないのです。草食動物で警戒心も強い馬達が、人に慣れるには少し時間が必要です。そこで「馴致」が登場します。

 人間が乗ることができたり、作業を手伝ってくれたり...意思疎通のしやすい動物と、そうではない動物の違いは何でしょうか?馬やゾウ、ロバは騎乗ができますが、シマウマやキリン、ダチョウ、サイなどはNGですね。やはり、賢さでしょうか?賢さの定義もいろいろありますが、IQも一つの参考になるかもしれません。人間のIQを100とすると、馬は約8.1ぐらいだそうです。

動物のIQ
ダチョウ:5
シマウマ:6.2
オウム :7.9
馬 :8.1
象 :12.6
犬 :19.0
人 :100
(※様々な仮説があるので、あくまで一例です)

 馬の知能は人間の2歳くらいの子供と同じくらいと言われ、かなり賢く、いろいろと記憶したり、学び成長する事ができます。困ったときには人に助けを求めたり、人間の表情を見て判断したりする観察力もあります。特に怒りの表情など、マイナスの感情には敏感に反応する研究が発表されていて、かなり空気の読める動物なんです!たしかに、乗馬あるあるですが、上手く乗れないときに、スタッフが乗り替わったら一瞬で動くという「え!?態度変えすぎじゃないですか?」みたいな時があったり(笑)、洗い場での様子も接する人によって変わったり。馬達はとてもよく人を観察し、そして、馬達自身性格や感情がとても豊かな動物です。とても賢いからこそ「馴致(じゅんち)」ができ、人間と意思の疎通ができるのではないでしょうか?。

 乗馬クラブにいる馬達、競走馬の馬達には慣れないといけないことが沢山!安全に人を乗せることができるようになるための馴致には、沢山の内容があります。

「手入れに慣れる(触れる事)」
「馬具に慣れる(ハミや鞍・調馬索)」
「人が乗ることに慣れる」
「環境に慣れる(車の音や周りの環境)」
「ゲートに入ることに慣れる(←競走馬)」等
 競走馬になるためには牧場で生まれた後、人を乗せる訓練を積みます。競走馬から引退し乗馬クラブに来たときは、レースをするのではなく、レッスンに落ち着いて参加できるような訓練をします。外乗コースにでる馬なら、海岸の波、森の木々の音、道路を通過する車などの試練があります。クレインでも「新馬調教(しんばちょうきょう)」といって、(クラブに新しく来た馬や、レッスン経験のない馬などを)様々な訓練、馴致を通して一般的なレッスンデビューできるようにしていく事を学ぶチームがあります(騎乗の技術の練習とはまた違う、馬の生態や成長を学び、見守ることができる人気の講座です!)

 一言で慣れるといっても、馬それぞれで難易度も変わってきます。人と同じように性格も、もともとも運動神経も違い、個性もあります。例えば...最初から全く水なんで怖くない!という鈍感(勇敢?)な子馬もいれば、小さな水たまりでも敏感に反応する馬、とにかく手入れが大嫌いで、まったく耳掃除をさせてくれない馬(馬の耳は意外と汚れやすいので、濡れタオルで耳の穴を拭いてあげたり、お手入れをしないと汚れが固まってしまいます)、他の馬が大嫌いで、グループレッスンや部班運動にはなかなか馴染めない馬(犬嫌いの犬と同じようなイメージです(笑))など。そして、訓練中もじっくり集中して取り組む真面目派から、すぐに飽きてしまう馬、性格のきつい馬や、レッスン中でも居眠りしてしまうようなおちゃめな馬まで...そんな1頭1頭の特徴こそが、乗馬の楽しいところでもあります。

 様々なものに慣れ、人間が安全に騎乗したり、馬と交流できるようにする事、それが「馴致」です。とても賢い馬達だからこそ、馴致を通し、さらに賢く成長し、人とより一層絆を結んでいくことができるのですね。皆さんが日々接し、いろいろな経験を積むこともとても大切です。ぜひ温かい目で見守ってあげてください。


written by Okanami 

   
参考
馬がこれほど賢い動物だったとは 人間の心を読み利用する知恵者: J-CAST ニュース【全文表示】動物の知能指数

メニュー