馬の歯の秘密 ~進化は歯と骨から~

馬の歯の秘密 ~進化は歯と骨から~

 6月4日~6月10日は「歯と口の健康習慣」。80歳になっても20本の歯を保つ事を目標にする「8020運動」を推進している厚生労働省、文部科学省、日本歯科医師会、日本学校歯科医会が実施している習慣です。「6(む)4(し)」にちなんみ実施されていた「虫歯予防デー」は2013年より「歯と口の健康習慣」となりました。

 人も、そのほかの動物も、命と歯は密接な関係にあり、歯並びや歯周病で命を落とす事もあります。草食動物の馬達も、健康に長生きする為には、人間同様、歯の健康もかかせません(馬の食と歯の関係は「馬の食べる!を大解剖」の回もぜひご覧ください。
調べだすと5500万年昔までさかのぼる!?馬の歯の歴史、リサーチしました。

<馬の進化は歯と骨の進化!?>
 馬の先祖は何か?考えたことありますか?馬の祖先は5400万年前ほどにさかのぼります。最初の祖先「ヒラコテリウム(エオヒップス)」は現在の馬とは異なり4本指をもち、葉食性(葉や灌木をたべる)の哺乳類でした。体長も45㎝ほどで、犬サイズくらい?背中に斑点があり、犬というよりは足の長めのうり坊(イノシシの子供)みたいです。
エオヒップス.fw.png
馬の先祖の足には、ちゃんと指がありました。

 ヒコテラリウムからスタートし、その後→メソヒップス(約3500万年前)→パラヒップス→メリキップス→ブリオヒップス(約500万年前)→エクウス(約100万年前)→そして、ついに現代の馬たちが誕生します!
このなが~い進化の過程で、足は一本指で長くなり(速く走ることができる)、低かった歯冠(歯ぐきから出ている部分の歯)は草をしっかり食べれるように高くなり(歯のすり減りに対応できる)、身長も高くなり、目の位置も広い視野を持つことができるように変わりました。それにしても、なぜエクウスヒップス、ウマヒップスと呼ばないのかと思いませんか?それは、エクウス=馬科馬属の動物の意味。ヒップス=ギリシャ語で「馬」の意味を持つためでした。「ウマウマ」と被らないようにエクウス以降は「ヒップス」がつかなくなったんですね!
サムネ用.fw.png
これが馬のスタート!


<馬の歯は何本?>
 馬の歯は、草を食べるためのスーパーアイテム。草を食いちぎるためのクワ状の切歯と、すりつぶす為のウス状の臼歯、メスは36本、オスは40本の歯があります(雄雌で歯の本数が異なるのは、哺乳類ではとても珍しい事のようです)生まれたときはまだ歯がなく、乳歯が生え、その後大人の歯に生え変わります。馬たちの世話をしているとやはり、それぞれ個性があり、歯の大きさや(そもそもの顔やあごの大きさ!?)、歯並び、黄ばみがあったり(笑)また、犬や猫と違い、歯の形が四角いので人間っぽさをかんじます。

<歯磨きはするの?>
 馬の歯と人間の歯の一番の違いは「馬の歯一生涯伸び続ける」こと。草をたべすりつぶす工程で歯はどんどんすり減っていきます、その一方、歯ものびるので、歯がなくなることも、伸びすぎて困ることもないんです。歯磨きをしなくても、すり減り伸びていくことから虫歯にはなりにくいのです。この歯が伸び続ける動物は、ほかにも色々いて、ネズミやモルモット、イノシシやゾウ、カバなどがいます。


<馬の歯科検診>
 虫歯にはなりにくいとはいえ...クラブや牧場の馬達には、年間の健康診断の中にきちんと『歯科検診』も組み込まれています。野生の馬ほど草を食べる時間が長くない馬たちは、歯の伸びすぎや、先がとがってしまう変形などが起こることもあります。人間と同じように。歯肉が後退したり、歯並びから肩こりや腰痛が起こることもあります。そんな歯のトラブルは『馬の歯科医師』が歯科検診で解決!歯を抜いたり、削ったり、磨いたり...まるで人間と同じようですが、なにぶん顔も歯も大きいので(笑)施術風景はダイナミックです。クラブでも年数回、馬たちの検診があるので運が良ければ、見学することができるかもしれません。


眞栄田獣医が歯科治療を行なっているところに遭遇しました。


<歯を見れば〇〇がわかる>
 人間の年齢は「お肌」や「髪」をみるとある程度推測できますが、馬の年齢は「歯」をみるのが一番!歯のすり減り、形、変色から獣医師などは年齢のわからない馬も、ある程度推測することができます。

 馬の歯の謎、いかがでしたか?哺乳類の中でも、意外に人間っぽい馬たちの歯♪♪馬も人間も「歯」を大切にして、ぜひぜひ長生きしましょう。歯医者さん...なかなかいくのをためらいますが、歯の健康習慣をきっかけに、メンテナンスにいったり、普段より少し念入りに歯のケアをしてみませんか?


written by Okanami

参考文献
アルティメイトブック「馬」・馬の百科・乗馬ライフ

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