【馬の蹄(爪)と装蹄師の仕事】

【馬の蹄(爪)と装蹄師の仕事】

 こんにちは!先日は馬の獣医師についてとりあげましたが、その他にも馬の健康に関わる携わる特殊な職業として「装蹄師(そうていし)」という仕事があります。ご存知でしょうか? 一言でいうと「馬の爪のケア&靴屋さん」とでもいいましょうか。人間にとって体重を支える足に関わる爪や靴は、体全体の健康にまでも影響する重要な部分です。これは馬も同じです。サラブレッドなら500キロほどの体重を支え、走り、演技や運動をするにあたり、蹄(爪)の調子や蹄鉄(ていてつ)(=馬にとっての靴)の状態はとても重要です。今回はそんな装蹄師たちの仕事を皆様に知っていただきたいと思います。
 
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■装蹄とは?
 装蹄とは、馬の蹄(ひづめ)に蹄鉄を装着する作業の事をいいます。大昔の野生の馬達は草原を走ることで、伸びた蹄を自然にすり減らし、伸び具合を調節していました。しかし、人間のパートナーとして家畜化されるようになり、伸びる量よりもすり減る量が増えてしまい、蹄の中にある神経や血管を刺激してしまうようになりました。人間でいう深爪の状態と考えていただければと思います。そこで、人間は馬のために靴と同じような「蹄鉄」を考え出したそうです。

≪装蹄の目的≫
①蹄(爪)の保護
②治療
③能力の向上


■装蹄師の仕事
 装蹄の大まかな流れは...

1、着けている蹄鉄を外す(除鉄じょてつ 
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2、伸びた蹄を切って整える(削蹄さくてい
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3、熱い鉄を蹄の形に合わせて叩く(修正・適合)
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4、釘で蹄鉄と蹄を留め、外れないようにする(釘つけ・釘締め)  
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このようになります。


 蹄は1ヵ月に1㎝程度伸び、1頭当たり30分~1時間ぐらいの時間をかけながら、装蹄の作業を行います。乗馬で活躍する馬たちの蹄鉄の素材は「鉄」なので、火をたいた炉に鉄を入れ、真っ赤に熱した鉄を叩く修正や適合の作業は、一見、鍛冶屋さんの仕事のようです。1頭1頭蹄の大きさや、形も違いますし、歩き方の癖、年齢や競技種目からくる疲労部分などを見極め、その馬にとって最適で健康な状態を目指し、蹄鉄の形を整え装蹄します。中には治療の一環として獣医師と連携しながら、ということもあります。

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 初めて装蹄作業を見る方は、熱い鉄を蹄につけたり、釘を打って留めることに驚くかもしれませんが、人間でいう爪の伸びた部分に行っているのと同じなので、痛みはありません。ですが、どの作業も装蹄の熟練した、経験と技を必要とする作業になります。

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  *その技を駆使し、イベントなどでは、ハート♥の蹄鉄なんかを作ってくれたりします!

 日本には「日本装削蹄協会」があり、毎年全国各地の予選を勝ち抜いた選手が技術を競い合う「全国装蹄競技大会」が開催されています。最優秀賞には農林水産大臣賞が授与されます。また、アメリカでは国際的な競技大会も開催されています。今回写真で登場してくれてます伊藤装蹄師は、2017年国際大会にも出場しています。その伊藤装蹄師に聞いてみました!


【装蹄で一番注意することは?】
 人馬の安全第一。 ←装蹄に使用する道具や場所には、危険なものも沢山あります。やはり、これが一番に来るんですね。

【この仕事のやりがいは?】
 馬が少しでも長い期間、健康に働けること。 ←装蹄で、馬の足元を整えることで、体のバランスも整い健康につながるそうです。

【日々のケアで皆さまにアドヴァイスは?】
 馬の性質を正しく理解し、向き合って(扱って)いけば、馬との楽しい時間を過ごせると思います。 ←「正しく理解」これが大切ですね。

とのことでした。

 『安全第一』も『長く健康に』ということも、『馬を正しく理解して』いないとできないことです。これは、馬に関わる全ての者に対していえることでもあるのだと思います。"人間とは異なる動物である"という事を正しく理解した上で、心が通じ合えるようになれたらいいですね。


 装蹄師の活躍の場は主に①生産地②競走馬③乗馬などの分野です。馬に携わる仕事が気になっている方、乗馬をされている方...馬を愛するすべての方に!ぜひ馬達の活躍を陰で支える職人!「装蹄師」という仕事の世界も、もっと知っていただけたらと思います。


written by Okanami

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